回収できそうもない売掛金は貸倒損失に出来る?
個人事業を営んでいる方は12月末が決算ですが、面倒な実地棚卸はお済ですか?
一番気になるのは、売掛金の様子でしょうか?
「取引先の業績が芳しくなく、売掛金が溜まってます。
貸倒損失が出来るのでしょうか?」
長いお付き合いのお得意先、代金の回収が少しぐらい遅れても、つい、取引を続けてしまいますね?
取りっぱぐれは経営を揺るがす規模でなくても悔しいですが、せめて税金の節約に貢献してお貰いたいかも。
税務では貸し倒れ損失の計上は、重要な論点です。
貸倒損失の計上は次の場合に限り認められていて、ただ業績が悪いというだけでは計上できないので注意が必要です。
①法律上の貸倒れ
会社更生法の更正決定や民事再生計画の認可の決定により、債権の一部が切り捨てられることとなった場合には計上が認められます。
※これはもう、弁護士さんから連絡が来たりの騒ぎなので、ある意味苦労もありません。
②事実上の貸倒れ
債務者の財政状態および支払い能力からみて、債権の全額が回収できないことが明らかである場合には、その明らかとなった事業年度において貸倒れを計上し、担保物があるときには、その担保物を処分した後に限り貸倒れ処理が認められます。
※実務でしばしば論点になるのはこのケース。
しっかり見極めて処理をすることが大切です。
③形式上の貸倒れ
債務者に次に掲げる事実が発生している場合には、その債務者に対する売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れ処理することが認められています(売掛債権のみ)。
・取引を停止した時以後1年以上が経過した場合
・同一地域の債務者について有するその売掛債権の総額が、その取り立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、その債務者に対して支払いを督促したにもかかわらず弁済が無い時。
※貸付金などには適用できない規定です。
よその事務所から移ってきた会社の決算書について調べるとき、売掛金の「年齢調べ」というチェックを行います。
会社に確認すると、もうずいぶん前に生じたものが、放置されていることが結構あります。
これだと②の当ては目が出来なくなる可能性も。
社長の回収への目論見など再確認して、善後策を考える訳です。
「高齢な債権は悩ましい」のです。
近年の税務調査では、このようなケースの貸倒れ措置は注目されることが多い。
「利益が出たら、貸し倒れにして節税に使うから、それまでは寝かしておこう」
昭和の時代には、そんな考えもあった気がしますが、危険です。
利益調整と見なされて、否認されるかもしれません。
「債務免除通知を出せば、ノーリスク?」
これも、状況によっては寄付行為と言われるケースもあるかも知れず・・・
税理士は苦労が絶えないと言うのが「現場」かもしれません。
税理士 冨岡弘文