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1億円の壁

1億円の壁とは、おおむね所得1億円を境に、所得税の負担率が低くなる現象を指す。
金融資産の多い富裕層ほど税負担が軽くなる税制上のゆがみとなっており、政府・与党は2023年度税制改正に向けて対応策を検討中だ。

1億円の壁が生じている原因は、給与・事業といった一般的な所得と、配当・利子などの金融所得との税率差だ。
給与や事業で得た所得は、原則としてすべてを合算した総額に応じて税率が上がる「累進課税制度」が採用されており、最大で55%(住民税含む)に達する。
一方、株式から得られる配当や株式の売却益、預貯金の利子といった金融所得は、例外的にその他の所得とは切り離される「分離課税制度」が適用されており、税率は一律20%にとどまる。
所得の多い人ほど所得全体に占める金融所得の割合が増える傾向にあるため、税の負担割合が所得1億円を超えるあたりから逆に軽くなっていくという現象が起きている。

岸田首相は昨年9月の総裁選で、1億円の壁の存在により「富める者と富まざる者の分断が起き、ひいては日本経済の停滞を招いている」と指摘し金融所得税制の抜本的な見直しを掲げていたが、株式市場の反発への配慮により就任から一週間足らずで「当面触らない」と方針を転換していた。

政府・与党では現在、金融所得とその他の所得の合計が一定額を超える人に限り課税強化する案などが検討されている。

 

この記事は「税理士新聞」から許可を頂き転載しています

 

相模原市の税理士 冨岡弘文税理士事務所

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