遺産分割協議をやり直すが、税務上の注意は?
父の相続について、税務申告も済んだのだけれど、遺産分割について見直す話が出ています。
税務上の注意点はありますか?
遺産分割協議のやり直しは、法律上と税務の実務とでは考え方に相違があります。
やり直した結果、譲渡や贈与があったとみなされて課税される可能性があることに注意が必要です。
このことは、元々、相続税がかからない規模の相続財産だったとしても、贈与と認定されれば、多額の贈与税の負担が生じる可能性も潜んでいるので厄介です。
先ず、遺産分割協議が無効や取り消しになる場合には、相続人以外が参加して成立したもの、または一部の相続人が参加せずに遺産分割協議が成立したもの、相続人の一部が未成年者で、法定代理人がいなかったもの。などが該当します。
これらの場合であれば、遺産分割協議自体が無効・取り消しとなったことが確定した日から2か月以内であれば、更正の請求が可能です。
但し、遺産分割協議自体が無効或いは取り消しであると判断するのは裁判所であり、手間と時間と費用を覚悟する必要があるようです。
ここで、遺産分割協議が有効であると判断された場合には、民法上で合意解除と認められた場合(契約で生じた債権債務を関係を当事者間の合意によって契約前の状態に戻す)でも、税務上は最初の遺産分割でいったん各相続人に帰属した財産を、分割協議後に譲渡・贈与したものとして贈与税などが課税されるという事です。
法律相談で、遺産分割のやり直しは出来ますか?と質問すると「ハイ大丈夫です」という答えがあるかも知れません。
しかし、想定外の税額が生じる可能性があるという事に注意です。
税理士 冨岡弘文