第1717号(2021年11月5号)
◆「金融所得課税を強化するのではなく、資産形成を促すべき」(10月20日、日本証券業協会の森田敏夫会長)――会見で。岸田文雄首相が公約である金融所得の課税強化を先送りにしたことについて、「首相が冷静な判断を示され安堵している。貯蓄から資産形成を促すことが国家的な課題だ」と述べた。日本の所得税は原則として累進課税が適用されているが、株式配当など金融所得の税率は一律20%であり、金融資産が多い富裕層ほど実質的な税率が下がる。岸田首相は所得再分配政策の一環として課税強化を打ち出していたが、株式市場への影響が顕在化して当面の撤回を決めた。森田氏は日本の高齢化が進むなかで「高齢者には給与収入がなくなるため金融所得の重みが増す」と主張した。
◆「米国こそがタックスヘイブンだ」(10月20日、米政策研究所のチャック・コリンズ氏)――日経新聞の取材で。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が10月に公表した租税回避の取引を記した資料集「パンドラ文書」をめぐり、「米国こそがタックスヘイブンだ。富裕層の財産を守るためのシステムができあがっている」と指摘した。パンドラ文書によると、相続税のないサウスダコタ州で信託会社が保有する資産が過去10年で4倍の3600億ドル超に急増していた。同州では1983年に信託財産に関する法律が改正され、匿名性が高まり、財産への課税逃れが容易になったという。コリンズ氏は「まず自分たちの家をきれいにすべきだ」と述べ、連邦政府による課税逃れの防止に向けた法規制の強化の必要性を訴えた。
◆「思い切り税金を使わなければ再エネの目標に達しない」(10月22日、電気事業連合会の池辺和弘会長)――会見で。政府が2030年度の再生可能エネルギーの比率を現状の倍である36?38%にまで引き上げる目標を示したことについて、「税制優遇や補助金など、思い切った税金の使い方をしないと達成は難しい」と指摘した。政府は脱炭素化を進めるため、二酸化炭素を排出する火力発電を現状の76%から41%に引き下げ、代わりに太陽光をはじめとした再生可能エネルギーの主力電源化を目指すとしている。池辺氏は「9年間で達成するには太陽光に頼るしかないが、適地が少ない」と課題を提示した。
~この記事は「税理士新聞」から許可を頂いて転載しています