第1720号(2021年12月5号)
◆「消費増税は有力な選択肢だ」(11月19日、自民党の宮沢洋一税調会長)――会見で。ポストコロナの税制改革について問われ、「消費増税がかなり有力な選択肢として(自民税調で)議論されるのは間違いない」と話した。経済状況を踏まえすぐに引き上げる状況にはないとしつつも、少子高齢化が進み膨らみ続けている社会保障費については「削るのか維持するのか」の判断を急がなければならないという。維持する場合には「何で埋めるかの議論は避けて通れない」とした。消費増税はこれまでも社会保障を支えるための経費に充てるとして段階的に行われてきたが、法人減税の穴埋めに過ぎないとの批判もある。
◆「税優遇では持続的な賃上げは起こせない」(11月19日、エコノミストの木内登英氏)――野村総研のレポートで。政府与党が2022年度税制改正に盛り込むとしている賃上げ税制の強化案について、「税優遇では持続的な賃上げは起こせない」と指摘した。与党税調からは、税額控除の要件となる賃上げ対象を非正規雇用者まで広げるほか、法人税から差し引く税額控除率を現行の15%から最大30%まで拡大する案などが出ている。しかし木内氏は「一時的に優遇措置を得られても、将来の成長に自信が持てなければ賃金の大幅な引き上げは行わない」とし、政府の案を「小手先の対応だ」と批判した。
◆「金融所得課税を強化すると税収が減る」(11月19日、大和総研の熊谷亮丸副理事長)――政府税制調査会の総会で。岸田首相が意欲を示してきた金融所得課税の強化について、「増税により(個人投資家の投資意欲が減退し)株価が下がれば税収減になりかねない」と指摘した。熊谷氏によれば、14年に上場株式等を対象にした軽減税率が廃止されてから個人投資家の買い手が減少して売り越しの状態が続いており、増税によりさらに買い手の意欲がそがれれば株価に悪影響を及ぼす可能性があるという。金融所得課税の強化案は2022年度の税制改正大綱には盛り込まれない見通しだが、公明党税調会長の西田実仁氏が「来年には改正に踏み込めるようにしたい」と話すなど政府与党からは意欲的な意見が出ており、課税強化に向けた議論が継続すると見られている。
~この記事は{税理士新聞}から許可を頂いて転載しています