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貸倒れ損失 利益操作と言われないために

貸倒れ損失 利益操作と言われないために

回収不能の売掛金や貸付金は決算時に貸倒損失として処理するが、これが認められるためには、その全額が回収不能であることが客観的に明らかでなくてはなりません。

そのため金銭債権について担保があれば、その担保物を処分した後でなければならず、また、保証人がいるときには、保証人に請求したうえで回収可能性の有無が判断されます。

一定期間にわたり取引が無い相手の貸倒損失については、取引停止から1年以上経っていることに加え、取立費用が債権額よりも多く、督促しても弁済が無いなら、備忘価額「1円」を残して、貸倒れ処理をすることが認められています。

厳しい条件ではあるが、貸倒れ損失の経理処理は、その期の損益に及ぼす影響が大きく、税額に対する影響も大きいので、何より事実認定が重要となります。

安易な判断で、課税逃れを指摘されないように気を付けたいものです。

利益を圧縮する目的で、安易に貸倒れを偽装するのが問題となる一方で、「貸倒れ損失によって赤字になると、金融機関に対して見栄えが悪い」といった理由から。今期の処理は見送って、「利益が生じたときに損失処理をしたい」と目論むケースもあり得るかもしれません。
しかし、貸倒れ損失の計上については「貸倒れが生じた日の属する事業年度に限られる」とした裁決が出ていることからも、いい加減な処理は禁物です。

貸倒損失を計上することによって赤字決算とか、業績赤字とか言われるのが困るのであれば、その金額について「特別損失」として計上し、例外的な決算処理であることを決算書上で強調するのもテクニックかも知れないですね。

ところで、子会社などに対する債権について債権放棄を検討する際には注意が必要です。
関連企業への債権放棄は、寄付金として判断される可能性があります。

近年、当局はグループ企業を使った赤字作りや租税回避に特に目を光らせているようです。
たとえ後ろ暗い気持ちは無いとしても、色眼鏡で見られるのだと、慎重に判断したいものです。

重ねて私の実感からの意見ですが、
昭和のむかしは損失計上の判断がご都合主義に流されていた気がします。
近年、当局はここを厳格化しているのかと思います。

 

税理士 冨岡弘文

 

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