海外で住んでいた家の3千万円控除
還暦を迎え、学生時代の友人と話をすると、海外勤務の経験者が多いのに驚きます。
私自身は、海外出張すら経験がありませんので。
長く海外で生活をするなら、賃貸よりも購入する方がお得かもしれません。
国内外で、日本の税金の取り扱いに違いが出るのは当然ですが、日本人でも一年以上国内に住まなくなると「非居住者」という税務上の取り扱いになり、日本の税金の対象が限定的になります。
帰国して、元に戻れば「居住者」としてすべての所得が対象です。
ここでの論点は、以前海外で居住していた居住者が、海外に残してきた家屋やその敷地を売却するケースの話です。
所得税では、
①居住用財産を譲渡した場合に、所有期間に関係なく譲渡所得から3,000万円まで特別控除できる制度。
・・・・「居住用の3千万控除」として知られています
のほか、
②居住用財産を譲渡した場合に軽減税率を適用する制度。
③居住用財産の買換えをした場合の課税の繰り延べの制度
④居住用財産の買換えで譲渡損失が発生した場合にその損失を他の所得から控除し、控除しきれない損失について、翌年以後3年以内に繰越控除することができる制度。
⑤居住用財産を売却し、その売却価額が住宅ローンの残高を下回り、かつ、譲渡損失が生じたときは、その譲渡損失を他の所得から控除でき、控除しきれない部分は、翌年以後3年以内に繰越控除することができる制度。
があるのですが、売却した元自宅が、海外にあっても使えるのは①の3千万円控除の制度だけです。
でも当てはまれば、ラッキーですね。
「海外のもと自宅を譲渡で、3千万円控除はOK」という事です。
ところで、これらの制度は、自宅を売った場合には、そのお金で次の住まいを用意しないといけないだろう。税金で手元資金が足りなくなるのは気の毒だ、という意味だと思います。
私の実務の経験では、売却した不動産が相続で取得したものであれば、取得費は昭和の時代に買った値段で、売却代金の殆どが値上がり益であったりするケースもよく見かけます。
最後にご注意。
税務は、実態と常識がベースです。
居住用というのは、本当に住んでいたという意味で、「住民票を置いておいた」というのは住んでいたことにはなりません。
書類上の形式だけ取り繕って、これらの特例を適用するのはズバリ、脱税行為とみなされます。
税務署は結構気にしていますので、甘く考えない方が良いのです。
税理士 冨岡弘文